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仙台地方裁判所 昭和33年(ヨ)31号 決定

申請人 古川交通株式会社

被申請人 古川交通労働組合

主文

被申請人組合は、申請人会社がする一般乗合旅客自動車運送営業その他附随業務を、左記の行為で妨害してはならない。

(1)  申請人会社業務用乗合自動車備付の車体検査証、損害賠償保険証およびエンヂンスイッチその他の附属部品を他に持ち去り該自動車の運行を妨害する行為

(2)  申請人会社が運行するバスから運転手、車掌、乗客を引きずり下す等その他運転を妨げる行為

(3)  一般乗客が宮城県古川市中里字大町百八十八番地申請人会社古川営業所待合室、改札口に出入することおよび出札の妨害をする行為

(注、保証金五万円)

(裁判官 池羽正明)

【参考資料】

仮処分命令申請

妨害排除仮処分命令申請事件

申請の趣旨

一、被申請人組合は申請人会社が為す一般乗合旅客自動車運送営業その他附随業務を左記の行為でもつて妨害してはならない。

(1) 申請人会社業務用乗合自動車備付けの車体検査証、損害賠償保険証及エンヂンスイッチ等を他に持ち去り、該自動車の運行を妨害する行為

(2) 申請人会社が運行するバスから運転手車掌乗客を引きずり下ろす等その運転を妨げる行為

(3) 一般乗客が古川市中里字大町百八拾八番地申請人会社古川営業所待合室、改札口に出入すること及び出札を妨害する行為

との御決定を求める。

申請の理由

一、申請人古川交通株式会社は昭和二十三年九月十八日道路運送法に基く一般乗合旅客自動車運送事業を経営し今日に至つている。

二、申請人会社のバス路線は

(1) 古川市を起点とする

(イ) 古川市清滝行

(ロ) 田尻町行

(ハ) 塩釜行

(ニ) 中埣行

(ホ) 志田橋行

(へ) 荒谷行

(2) 田尻を起点とする

小牛田駅前行

(3) 松山町を起点とする

(イ) 松山駅行

(ロ) 鹿島台行

(4) 小牛田を起点とする

志田橋行

(5) 鹿島台を起点とする

(イ) 船越行

(ロ) 二子屋行

等であり各路線の大部分は申請人会社の単独路線であるからこのバスの運行が停ることは沿線居住者及其の一般利用者の蒙る打撃は甚大で公益上極めて大なる影響がある。

而して申請人会社の右バス利用者は一日平均約二千人である事実に徴し之れが寸時と雖も運行を停止又は遅発する等ダイヤの乱れは之を利用する一般人に対し極めて大なる不便と苦痛を与えることになり、公益事業経営者として公衆の日常生活に事欠くことと相成り申訳ない事柄である。

三、申請人会社は公益事業の本質に省み一意事業の隆盛と之に従事する従業員に対し其の待遇等に関し能う限りの力を尽して来た心算である。

四、ところが被申請人組合は昭和三十三年八月初旬結成し同月四日被申請人は申請人に対し、一、夏季手当の支給、二、未払賃金の即時支給其の他数項目の要求を掲げたる要求書を突き付けたので申請人会社は同月四日午後七時半より午後十時迄古川営業所に於て団体交渉したが妥結するに到らず更に団体交渉を継続することとした(疎甲第二号証)に拘らず被申請人は同月三日附書面で宮城県地方労働委員会に対し申請人会社に対する争議行為は同月十六日午前零時より突入し完全解決迄之を継続する旨予告通知を為した。

地方労働委員会は右予告通知を同月五日正午受理している(疎甲第四号証)。

この点から見れば被申請人は申請人と円満な団体交渉を重ねる意思が最初から無かつたものと謂はざるを得ない。

五、申請会社は被申請人と八月四日団交後、被申請人の要求の一である未払賃金につき八月五日六月分の賃金を、同月九日七月分の賃金を各支払つた。

六、右の様な被申請人の信義誠実に反する態度から争議行為に名を藉り、会社の経営を妨害する意図の下に申請人の所有に属する各乗合自動車車体検査証、損害賠償、保険証又はエンヂンスイッチ等を各車輛内より他に持ち出し自動車の運行を不能にする(右の内一がなくても自動車は運行出来ない)争議行為逸脱の不法行為を敢てする虞が多分にある。

七、申請人会社従業員は五十三名で其の中非組合員二十七名居るので(疎甲第六号証)被申請人の争議行為中も公益事業たるの本旨に則り公衆の日常生活に支障なきを期する為前叙の如く被申請人組合員に非ざる人々を動員して一般乗合自動車運輸事業の稍稍正常なる運行を確保すべく努力して居る。

八、被申請人組合は争議行為に於て、之を逸脱した非合法行為に出でる虞があり斯くては申請人は公益事業経営不可能に陥る公算大なるにつき本案提起前の執行保全の方法としてこの仮処分を求むる次第である。

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